一般社団法人 新木造住宅技術研究協議会(新住協)関西支部有志メンバーで構成するQ1住宅を施工可能な工務店・設計事務所、施工事例、イベント情報が満載

2021年05月10日プロの家づくりコラム 家づくりをお考えの方へ

注文住宅を設計事務所で建てるメリットデメリット

こんにちは、宝塚市で設計事務所を営む、工藤建築環境設計室 工藤晃久です。

家を建てようと考えた際、ほとんどの人は有名ハウスメーカーに頼むか地元の工務店に頼むか悩まれるのではないでしょうか。
ハウスメーカーと工務店のどちらが良いかは人それぞれだと思いますし、それら2つを比較したコラムはよく目にしますので、このコラムでは建築士らしく、ハウスメーカーや工務店以外の家づくり。
設計事務所に頼む家づくりについて、メリットデメリットをご紹介いたします。

目次
  • そもそも設計事務所って何?
  • 設計事務所で家を建てるメリット
  • 設計事務所で家を建てるデメリット
  • 設計事務所に頼む場合こだわりたいポイントを考えよう
  • 高性能住宅を設計事務所で建てる場合の注意点

そもそも設計事務所って何?

設計業務を中心に行っている会社を、設計事務所と言います。
「建築士」の資格を有する人が所属または代表を務めており、住宅だけでなくビルや公共施設など、設計を行う建物の種類が多岐にわたっているところが、工務店やハウスメーカーと違うところです。

設計事務所の主な仕事は、住宅を含む建築物の設計施工を監理するという点です。
設計は、周辺環境も含めどういった建築にするかイメージする基本プラン。
具体的な形状を作る、基本設計。
実物の建築とするための仕様を決める実施設計の3つに分かれています。
建築物を形作るための工程に応じた、図面を製作することが建築士の作業です。

施工を監理するというと、現場監督のようにも受け取れますが建築士は現場監督のように現場の進行を管理するのではなく、自身が設計した図面通りに工事が行われているか。
建築物の完成まで監理をしてチェックする業務を言います。

注文住宅を建てる際の設計事務所の役割は、建築主の希望や要望、予算や建築地に合わせて間取りや設備の提案や、より心地よく暮らせるようデザインするのが主な業務です。
合わせて、建築主の大切な予算を管理しつつ、現場を調整する場合もあります。

家を建てることは人生に1度あるいは2度が一般的です。
経験がないにもかかわらず、人生最大と言える買い物を行う建築主が後悔することの無いよう、将来を見越す設計を行い心地いい家が完成するようサポートすることも設計事務所の大切な業務となります。

設計事務所で家を建てるメリット

理想のデザインを実現可能

設計事務所に依頼する最大のメリットは、自分の思い描く家が建てられるという点にあるかと思います。
例えば、「デザイナーズマンションのような家」「カフェのような家」など、理想のデザインを基にした個性的な家も設計事務所であれば建てることが可能です。

ハウスメーカーや工務店に依頼した場合、施工の技術や家の性能上叶えられないデザインもありますが、設計事務所に依頼した場合は、自由に設計した図面を基に、建築できる工務店や建築会社を探して施工を依頼します。
施工技術を基に設計を行うか、設計を基に施工できる会社を探すかの違いですね。

ごく普通の家の場合であっても、間取りや内装・家具や設備に至るまで、理想のデザインを伝えれば可能な範囲(予算や土地で変わってきます)で理想を叶えることが可能です。

費用が明確になる

設計事務所の家というと、個性的なデザインで高級住宅のようなイメージを持たれるかもしれませんが、そんなことはありません。
もちろんそういった家も建てられるのが設計事務所の家ですが、ごく一般的な限られた予算で建てるお家でも、ちょっとした希望や理想を予算内で形にするのが得意なのが設計事務所です。

建築主の要望をリスト化し、漠然とした希望や理想を明確にしていくことでコストの削減が可能となります。
例えば、特にこだわりたいポイントに予算を多くとり、コスト削減できる個所は既製品を用いる、CM分離発注方式を取り入れるなど等、予算に合わせて建築主の要望を叶えられる工夫を行います。

同時に、設計事務所には決まった施工業者はありません。
信頼し安心して任せられる工務店と付き合いのある設計事務所は多いですが、その中でも複数の工務店に建築費の見積もりを出してもらう事で、適正価格とは思えない工務店や、経費割合が高い工務店を除外できます。
知識をもった公正な立場の設計事務所が建築主と共に判断することで、相場にあった適正価格で住宅を建てることが可能となります。

ただしこの建て方は、建築主の意識の持ちようも重要になってきます。
それは、相場にあった価格という点です。

見積もりをいくつかの工務店に出してもらうのは、図面通りの施工ができるかどうかの確認であるとともに、高くない相場にあった価格を導きだすためであり、安く叩くためではありません。
家を建てるという事は、多くの職人の技術と、膨大な量の材料、そして時間が必要となります。
無理やり安くしようとすれば、それは家の出来に反映されます。
建築主が望む設計図面に対して適正価格であるかどうかが重要だという事を忘れないでください。
その上で、安ければいいと希望されるのなら、設計事務所ではなくローコストビルダーをお勧めします。

安心できる施工監理

設計事務所に依頼した場合、工事期間中の施工管理を工務店などの施工業者だけでなく、設計事務所でも行います。 住宅が完成するまで工事内容の確認を設計事務所の設計士が直接行う事で、工事の手抜きや勝手な部材の変更などが起こりにくくなります。

その他にも、知識が乏しい建築主であっても、設計事務所がサポートすることにより、想定外の追加工事が必要となった場合でも、その重要性や費用を的確に判断することができます。

もちろん、ほとんどの工務店やハウスメーカーは、丁寧な施工を心がけ、建築主の不利益になるようなことを行う事はないと言えますが、ニュースになるような、手抜き工事を行う会社があるか分からないのもまた事実です。
万が一を考えると、設計事務所と施工会社。両方の視点から施工管理・工事監理を行う事で、より安心感のある家づくりが可能になります。

設計事務所で家を建てるデメリット

設計事務所を探すのが大変

有名な建築家に頼む場合、その人に設計してほしい!と願うのですから特に問題は無いでしょう。
しかし、「こういう家を建てたい」「こういうデザインが理想だ」というように、理想の住宅デザインを思い描いている場合、それを設計できる設計事務所を探す必要があります。

設計事務所は建築主の要望を聞いて設計することが可能ですが、得意不得意ももちろんあります。
不得意な設計内容の場合、「思ったような提案がされない」「調査を含めて時間がかかる」「使用される建材や設備、住宅性能が理想と全然違う」という事が起こります。

こういったことを避けるためにも、理想に近い設計事例のある設計事務所を探す必要があります。
また、理想に近い設計事例を見つけても、住宅性能が理想とはかけ離れているという場合も多いので、両方を満たす設計事務所を探さなければいけないので注意が必要です。

特にQ1住宅のような工法や設備機器に頼らない高性能住宅の場合、設計はとても大切です。
どう設計すれば本物の高気密高断熱住宅になるのか。建築士が高気密高断熱住宅の構造を十分理解している必要があり、実際に設計し建てた経験があるかどうかが重要になってきます。

高気密高断熱住宅を設計したことの無い建築士に依頼した場合、一般的な住宅以上に夏に暑く冬に寒いという事も起こりえるので十分注意してくださいね。

設計・監理費用が高くなる

設計を設計の専門業者に依頼し、工事を工務店などの専門業者に依頼するため、工務店やハウスメーカーで家を建てた場合と比べて家づくりに携わる会社が増えます。
そのため、割高になることは容易に想像できます。

とはいえ、総額はどうか・・・というと、一概に何とも言えません。
理由は、注文住宅は二つとして同じ家が無いからです。

その上ではっきりと言えることは、設計事務所に依頼した場合、家の総額の中で設計・監理費用が占める割合が、工務店やハウスメーカーで家を建てた場合と比べて高くなるという事です。

例えば・・・設計事務所も工務店も総額3,000万円かかった場合。
設計事務所の場合、設計・監理費用が15%の450万円で、施工費や諸費用が2,550万円。
工務店の場合、設計。監理費用が10%の300万円で、施工費や諸費用が2,700万円。

割合が高くなるというのは、上記のように15%と10%の違いです。

完成までにかかる時間が長い

設計事務所なら理想に近い家を建てられるという事は、イコール自由度が高いという事です。
自由度が高いという事は、自分たちで決めることも多くなり、詳細な図面が必要な場面が度々発生します。

その次に、出来上がった設計を実際に施工してもらう会社を決める為の、見積もりや選定作業が必要となります。

工務店やハウスメーカーでは必要のない、家を施工する会社選びという工程が増えるため、実際の工事が始まるまでにも時間がかかってしまうのです。

設計事務所に頼む場合こだわりたいポイントをしっかり考えよう

「選ぶ範囲」が決まっている場合が多いハウスメーカーや工務店とは違い、設計事務所で行う家づくりはほぼ自由です。
無茶な願いも設計事務所なら、設計図に起こすことは容易なため、無茶な要望も通りやすくなります。

しかし、ほとんどの建築主の場合予算には限りがあり、快適な暮らし方というものがあります。
どういった家で暮らしたいのか、どこにこだわりたいのか。
自分たち家族がこだわりたいポイントを明確にすることで、予算を抑えつつも、理想の家づくりができるのです。

無茶を言いやすい分、気が付くと予算オーバーという事はよくあります。
設計事務所で家を建てる場合は、いくつもの「こだわりポイント」をしっかりと設計士に伝えつつ、優先順位を設け無理のない予算を心がけてることが重要です。

高性能住宅を設計事務所で建てる場合の注意点

高性能住宅と一言で言っても、有名ハウスメーカーのような特許を取得した耐震住宅や高断熱住宅、Q1住宅のように土地に合わせた設計と施工方法で実現する高気密高断熱住宅など種類は様々です。
ハウスメーカーの高性能住宅は、各社それぞれのハウスメーカーでしか建てられないため、社外の設計事務所が家づくりに携わる場面はほとんどないと言えます。

半面、Q1住宅のような木造在来工法を主とした高性能住宅は、特許で技術が守られているわけでも、工場で製品として作られているわけでもなく、設計事務所が設計しようとすればいくらでも可能です。
しかし・・・本当にそうなんでしょうか。
上でもお伝えした通り、設計事務所には得意不得意があります。

Q1住宅を例にさせていただきますが、Q1住宅は設計と施工技術で夏も冬も快適に暮らせる家を実現しています。
この「快適な暮らしを実現」しているのは、特殊な設備や工法ではなく、ただ「土地を見て」「風を読み」「太陽の向きを計算」し、「断熱材の厚み」や「方角に合わせて窓を選ぶ」という丁寧な家づくりです。

だからこそ少し間違えるだけで、快適とは真逆の家が完成する危険があるのが、高性能住宅です。

特許や会社内で守られている特殊な技術や製品で無いからこそ、高性能住宅の設計にはしっかりとした知識と経験が必要になってきます。
好きなデザインに、高性能住宅の機能を持たせたいからと言って、全く経験のない設計事務所に依頼するのだけは控えてくださいね。

投稿者プロフィール

株式会社工藤建築環境設計室 工藤晃久
私が考える家造りは、冬は暖かく夏は涼しい 『快適な住環境』をお約束致します。また、快適な住環境の家は『人にも環境にも優しい』住まいだと考えています。
住まいにとって本当に必要な性能は住宅設備(キッチンやユニットバス・トイレ)などの性能ではありません。 耐震性や断熱性、防犯や住環境(採光・通風・温熱環境)こそが重視されるべき性能なのです。 工藤住環境設計室ではこれらの性能を最大限に発揮させるため、基本設計にこだわり、デザインだけを追求した設計ではなく、常に『住環境』を考慮した設計をお約束します。


メニューへ
戻る

Copyright © 新住協関西支部Q1住宅部会  All Rights Reserved.