2018年02月26日プロの家づくりコラム
高断熱住宅って?
高断熱住宅の定義
2月もあと少しで終わり、今週は3月に突入。
2018年が始まって早くも2ヶ月が過ぎようとしています。
「一月はいぬ、二月は逃げる、三月は去る」と言って昔の人も年が明けてからの数ヶ月間の時間があっという間に経ってしまう感覚を言い残されておられますが、本当にその通りだと思います。
そんな例年に比べて随分と寒かった2月の終わりと3月が温かくなる事を願いつつ、今年初めてのコラムを更新したいと思います。
今回は今年第1回目という事で、改めて高断熱住宅の定義についてのおさらいをしておきたいと思います。
実は、高断熱住宅という言葉自体の明確な定義はありません。
唯一明確な基準といえば平成 11 年に国土交通省から告示された省エネルギー基準、いわゆる「次世代省エネルギー基準」(次世代省エネ基準)で断熱性能や気密性能の目安が基準値として示されています。
この基準は北海道から沖縄まで日本の国土を地域ごとに分けて必要な住宅断熱性能を数値化して表しておりますが、その施行も随分前のことで、現状に即しているかというと甚だ疑問です。
次世代省エネルギー基準の最低限の性能をクリアしているからといって高断熱住宅だとは言えないのが実際のところです。
寒くない家づくりなんか簡単。
今年の冬は新潟をはじめとする日本海側では観測史上稀に見る大雪に見舞われて水道管の破裂や連日の雪掻きなど、随分と苦労をされた様です。
東京でも数回積雪がありましたし、新幹線のダイヤが狂うなど、関西に住まう私たちの生活にも少なからず影響がありました。
例年に比べて寒い冬だっただけに、現在、もしくはこれから家づくりを計画していこうとお考えの方は寒くない家にしたいと思われたのではないでしょうか。
寒くない家を作ること自体はそんなに難しいことではありません。
というのは冬の間、エアコンや石油ストーブ、ガスファンヒーター等を総動員して暖房をかけまくったら家の中は暖かくなるからです。
しかし、そんな事をしていたら光熱費の家計への負担は馬鹿になりませんし、世界的に省エネルギー、CO2排出を削減して地球への環境負荷を低減しよう!と叫ばれている今の時代に即しないのは誰もが感じられる事だと思います。
できれば少ないエネルギー、コストで暖かな家にしたいと思われるのではないでしょうか。
光熱費を抑えて暖かな住環境を実現するのが高断熱住宅。
では、光熱費を抑えながら、暖かい家にするにはどうすればいいか?その答えこそ高断熱住宅に隠されているのですが、一概に「この家は暖かいですよー」と口で言っただけで高断熱住宅になるわけではもちろんありません。
断熱性能が高く、少ないエネルギーコストで暖かい住環境を担保できる住宅には確固たる基準があってしかるべしですよね。
ドイツのバウビオロギーという考え方に沿ったパッシブデザイン、パッシブハウスと呼ばれる太陽光などの自然の力を受動的に利用してエネルギーコストを抑える方法論も日本に伝わっておりますが、日本における高断熱住宅の草分けはやっぱり日本で最も寒い地域の北海道にあります。
室蘭大学の鎌田元教授が長年かけて住宅性能を高めつつイニシャルコストを抑える建築設計、施工について研究をされて、その研究結果(例えば長期優良住宅の標準規則である外壁の通気口方など)の多くが現在の住宅設計の基本的な考え方になっています。
厳しい寒さに晒される北海道で如何に暖房コストを下げて快適な暮らしを実現出来るかを技術的な面から長年研究をされてきて、業界に先駆けて建物の断熱性能の数値化を実現してきました。
地域に合った、自分に合った断熱性能の見極め方
私たちが住まう関西、特に瀬戸内に面した都市は全国的に見ても比較的温暖な地域であり、北海道並みの断熱性能が必要かと問われたら、必ずしもそこまでのスペックは必要ないかもしれません。
しかし、近年、住宅内での気温の格差によりヒートショック現象で心筋梗塞などの疾患を発病して亡くなる方が多いことへの注意喚起や、住宅内での気温と相対湿度の低さが気管支系の疾患に結びつくと言うイギリスでの研究結果も続々と発表されています。
住宅は最も身近な環境です。
健康の面から考えても北海道並みとまでは言わないにしても、関西地域においても真冬は氷点下まで気温が下がる事を考えれば快適で安心な温熱環境を保てる家作りが必要だと思われます。
高断熱住宅とは、住宅の外皮(屋根や外壁)の熱貫流率が低い住宅、外気の暑さや寒さを食い止める性能を持った住宅のことであり、ぼんやりと暖かい住宅ではなく明確な数値によってその性能が表されるようになっています。
Q値等で表される住宅性能の数値を確認し、実際に出来上がった住宅の住み心地を体感されて性能数値と体感を合わせた上で比較するのが最も間違いなく高い住宅性能の住宅を手に入れる秘訣だと思うのです。
それを何件か繰り返すうちに自分が求める数値はこのくらいだと分かってくるのではないでしょうか。
もう一つ付け加えておくと、就寝の際に高級な羽毛ぶとんをかけたとしても、体から離れていて隙間だらけでは全く暖かくないのと同じように、いくら断熱性能を高めたところで、すき間風が通り抜けるような住宅ではその断熱性能が生かされません。
C値という数値で計測されるこの性能は建物の隙間面積が表され、高断熱住宅を取得される上では非常に重要なポイントです。
高断熱住宅は高気密とセットでなければ宝の持ち腐れになってしまいまう事を念頭におきながら、とにかく、馴染みの無い言葉、基準だとは思いますが、実際に出来上がった住宅でQ値やUA値そしてC値を確認しながら、地域に合った、自分に合ったスペックを探られる事をお勧めします。
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